未来の話をしよう

生涯学び続けることが大切 2019.5

 日本人は勤勉である、というイメージを、国内外問わず持たれているようです。わたしも長い間それを疑わずに生きてきました。しかし、本当にそうなのでしょうか。実は、教育機関を卒業した社会人の学習時間において日本は、先進国の中で最低レベルというデータがある通り、日本人は大人が勉強をしない国のようです。そしてそれと歩調を合わせるかのように、日本人は労働生産性も先進国では下位に位置しています。

日本は、基礎教育に関しては高いレベルを誇っているので、高校や大学に合格することがゴールになりがちな学習になっていることにも一因があるのではないでしょうか。

もちろん、目的の高校や大学に合格することはとても素晴らしいことです。ただ、ゴールはそこではありません。勉強を通して身に付けるべき最も大切なことは、「自分の頭で考えて解決する力をつける」ことに尽きます。そして何より、生涯学び続けることが、昔とは比べ物にならないくらいのスピードで変化しているこれからの時代をたくましく生き抜くためには、必要不可欠になっていくのだと確信しています。

基礎英語を聴こう 2019.4

 今月から新年度が始まりました。進学、進級など、新しい環境に飛び込む方たちも多いことと思います。

英語を学んだことがない人が初めて触れる教材として、ラジオの「基礎英語」をお勧めします。理由は何と言っても手軽に始められること。ラジオがなくても今はスマホのアプリで聴くことができ、さらにその時聴き逃しても過去一週間分まで遡って聴くことができます。お金もかからず(テキストを買っても毎月500円以下!)、毎日15分、同じ時間に聞くということは、勉強の導入のルーティーンを作るのにも、とても有効です。内容も、歴史があるだけに素晴らしく、一応中学生向けのコンセプトではありますが、中学生に限らず英語を学ぶ多くの人に十分役立つ内容だと思います。中学生にとっては、学校よりも少し早めに文法の勉強ができ、教科書にない語彙表現もたくさん覚えられ、何よりも声に出すことで、綴りと音の関連がいつの間にか身についてくるという利点があります。英語が苦手な人の共通点に、とにかく声に出さないという点があります。学校では自信がなくてなかなか声が出せない、と言う人でも、自宅で一人で聴くのであれば、少しハードルが下がるのではないかとおもいます。

今月からリニューアルしてまた1年間、新しいシリーズが始まるので、これを機会に英語への扉を開いてみてはいかがでしょうか。

絶対積極という考え方 2019.3

 個人的な話ですが、先日、続けて二回、事故にあいました。幸いどちらの事故もケガをしないで済んだのですが、その話をすると、二種類の反応があることに気が付きました。「それは災難、ついていなかったね」というものと、「その程度で済んでよかったね」というものです。

同じ状況に対する反応の違いは、いわば、受け止め方の違いによるものですが、後者のような考え方を「絶対積極」と言います。つまり絶対積極とは、「よいことも悪いことも、よいことであると自覚、実感する」考え方です。

普段私たちは良いことには積極的になれますが悪いことに対してはすぐに消極的になり、一喜一憂しがちです。勉強するときに一喜一憂は最大の敵。人は、思った通りの人間になっていくものであり、ミスをするたびに「自分はこんな問題すらできない」と思っていると、本当に成績も伸びないからです。「私ってなんてついてないんだろう」と思う人は本当に運も悪くなります。

無理してでも、「よいことも悪いこともすべてが学びであり、有難いことだ」と考えることはとても大切です。(ただ、子どもの場合はなかなかこれができません。どうしても、点数が悪いと怒られたりと、よいこと悪いことを区別しながら生活しているからです。)自分に降りかかったマイナスな出来事はこの程度でよかった。次はそうならないようにしようと考えられるような強い心の状態を作ることが、前回の失敗の効用を知るとともに、勉強の成果を上げるためにはとても大事な土台となるのです。

 

 

勉強を伸ばすカギは日常生活にある ②失敗の効用を知る 2019.2

 前回、日常生活の中での心と体と頭の使い方の「癖」が、勉強や仕事、人生に影響を与えるという話を書きましたが、今回はその中でも最も重要な心の使い方について。

よく、心どのように保つかという話になると、積極的な状態を保つことが大切とは、様々な書物などに書かれています。しかしそれよりもまず、「失敗」に対する考え方を変えることが大切であるとわたしは考えます。

失敗すると、やる気がなくなったり叱られたり。失敗とは多かれ少なかれ、いやなものです。高校入学早々先生が「20点取ったら、まだ80点分も学ぶことがあるなんてすばらしいと喜べ」と話し、とても驚いたことがあるのですが、これは本当に大切なことだと思います。もちろん本番の入学試験やテストなどでは間違えない方がよいですが、練習段階においては間違いが多い方がそこから気づきや学びをたくさん得ることができ、勉強になるのです。そして、テストで極めて優秀な成績を取る子供たちは、失敗しないからよい成績を取るのではなく、失敗に対する見方が違っており、失敗や間違いそのものにではなく、「なぜ間違えたのか」「どこに問題があったのか」と、いう、原因分析と対策に心を使っているのです。

まずは失敗の効用を知り、考え方を変えること。そうして初めて積極的な行動が実を結びだすと、わたしは思います。

勉強を伸ばすカギは日常生活にある① 2019.1

 「どうやって勉強をすればよいかわからない」という類の悩みを耳にすることがあります。また、巷には様々な勉強法の本があふれていますが、誰にでも利く万能の方法も無いようです。ただ、勉強が伸びる子とにはやはりある種の共通点があるように思えます。それは、日常生活の中での過ごし方にあると感じます。

よく考えてみればわかると思いますが、勉強のときだけ、最良の頭の使い方ができるものでしょうか。人間は、習慣化された動物です。日常生活の些細な出来事に対して常に心が動き、体が反応し、頭を働かせています。そしてその「癖」になった習慣が、勉強や仕事、更には人生にまで影響を与えていくのです。例えば、しっかりと計画を立てて学習する習慣がある子は、日常生活の中でも計画を立てる習慣を持ち、友達と遊ぶときもしっかりと時間の枠組みが組まれています。計画を実行するときに大切なのは時間を守ることですが、日常生活の些細な出来事に対して時間を守れない子が勉強のときだけ時間を守れることはあり得ません。仕事する上でも同様で、効率的に仕事をしている人は日常生活でも無駄のない生活をしています。それでは日常生活をどう過ごせばよいか。つづく

大学入試が変わります 2018.12

 大学入試が変わる、という話がよく聞かれるようになりました。大きく変わる点は、現状1月下旬に行われているセンター試験が2019年で廃止され、2020年からは新たに「大学入学共通テスト」が始まることです。現在のセンター試験はすべて(答えを選択肢の中から選ぶ)マークシート方式ですが、共通テストは国語、数学において記述式問題が導入されることと、英語において民間の英語4技能(読む書く聴く話す)資格・検定を共通テストと併用すること、そして、思考力、判断力、表現力を一層重視したマークシート式問題へと改善を行う点です。

背景には社会のグローバル化や情報化が進み、従来の「知識、技能」を中心とした学力評価から、それを活用するための「思考力、判断力、表現力」が、より一層求められる時代になってきたことが挙げられます。連日外国人労働者の受け入れ問題がテレビを賑わせていますが、今後、多文化との共生社会になることは避けられず、世界の人たちと協働するために、主体的に学ぶ力や問題解決力が一層不可欠になるでしょう。(教育の現場でも、「アクティブラーニング」という言葉が数年前からずいぶん聞かれるようになりましたが、)座学中心から能動的な学びへの転換が期待されているのだと、強く感じています。

読解力は語彙力から  2018.11

「うちの子、読解力がないんです」という悩みをしばしば耳にします。また、計算はできるけれど文章問題が苦手で…と悩むお母さんたちも多いのではないでしょうか。
ただ、読解力がない、文章題が苦手、さらには作文や記述が苦手といった子供に共通する特徴として、「語彙力がない」ことが挙げられます。語彙力とは、文字通り言葉の意味のことで、これがないと、まず文章を理解することができません。また、自分の感情を正確に表す言葉を知らなければ、書きたいことも書けません。教科書や問題文の内容も理解できず、英単語を覚えようにも、和訳の意味が分からないと、英単語を覚えることもできない。つまり語彙力が必要なのは国語だけと思われがちですが、実は、すべての教科にとって必要なのです。
では、読解力を増やすためには具体的にはどうすればよいか。まずは本や新聞など、多くの文章を読むこと。そして、そこに知らない言葉が出てきたら徹底的に調べる。今は電子辞書やスマホなど、便利なツールもたくさんあります。一見地味に思われるかもしれませんが、自分の頭の中に語彙を増やしていくためにはそれを重ね積み上げていくことです。そして、自分の身に着けた語彙力は、勉強に限らず、一生を通じて、自分の強烈な力になってくれるはずです。

フィンランドの教育に日本の未来を夢見る!③ 2018.9

 引き続きフィンランドの学校のお話ですが、わたしが何より深い感銘を受けたのは、フィンランドでは、トップダウンではなく学校や教師に自由な裁量が認められていることでした。国の教育管理制度を最小限にして、地方自治体と学校、一人一人の教師に教育の権限があり、転勤もほとんどなく、学校は、まるで第2の家庭のように長い目で子供を育てる土台が整っています。そしてその自由な学習環境は子どもたちにも保障され、教室にソファがあって、勉強をしたくなくなったらソファで休んでもOK。そんなことをしたらみんな勉強しなくなるのでは、と、心配になりましたが、「学ぶことは自分のため」という意識が徹底されているので、他人の目を気にすることなく、安心して学習できるようです。

娘が学校からもらってくるプリント類一つを見ても、私は日本の学校の先生たちは、本当に一生懸命で、力量もすごいなぁとつくづく頭が下がる思いです。さらには部活動なども熱心に指導してくれて、感謝しかありません。こんな力のある先生たちが、もっと自由な裁量で教育できるようになれば、そして国や学校はそこをサポートする関係になれれば、子どもたちにとっての教育はより自分のためのものになり、勉強は学生時代のものだけでなく生涯学び続ける土壌が出来上がってくるのではないかと思うのです。

フィンランドの教育に日本の未来を夢見る!② 2018.8

 前回フィンランドの学校には制服がないという話を書きましたが、わたしがさらにフィンランドの教育で興味深かったことは、外国語教育が進んでいると思われているフィンランドで英語を学び始めるのは小学3年生からで、低学年のうちは徹底して母国語を学ぶということ。自国語をしっかり学ぶことは、アイデンティティの培うために重要であり、ほかの言語を学ぶためにも自国語の文章構造をきちんと理解している必要があるという考えには私もとても共感しました。日本人はともすれば日本語をないがしろにしてまで子供の英語の早期教育に力を注ぐ人が少なくないように思いますが、思考力を育てるためにもアイデンティティを養うためにも、母国語を正しく理解するということは最も大切なことだと私は常々感じています。

 そしてもう一つ、フィンランド人は読書量がとても多く、人口56万人のヘルシンキには38もの図書館があるように、図書館の利用数も世界一です。本を1冊読むことは一つの新しい体験をすることだという考えがあるくらい、幼いころの読み聞かせと成長してからの読書が伝統と習慣になっていることは、フィンランドの教育力の土台になっているのだと感じました。つづく

フィンランドの教育に日本の未来を夢見る!① 2018.7

 以前、教育先進国であるフィンランドの学校の様子をテレビで見て驚いたことがあります。それは、子どもたちがとても自由に勉強していること。制服もなく、中にはショッピングセンターの紙袋に穴をあけて袖を通して登校する子もいて、さすがにその生徒は叱られていましたが、日本の教室の風景を見慣れていた私にとってはとても衝撃的でした。

 日本では中学生になると当たり前のように、それまでの私服から、制服を着て通うようになります。制服は楽だしかわいいし、それについて私は批判するつもりはないですが、ただ、その中に「なんで」と疑問を持つ子どもがいたら、それを頭ごなしに否定せず、むしろ「そういう疑問を持つってとてもいいね!」と大切にしたいと思います。前回私は、日本はどうしても人と同じことを良しとする風潮があったと書きましたが、多様な意見を認め合うことがますます重要になるこれからの時代。当たり前と思われていることの中にもなぜ?という視点を持つことは、思春期を生きる子どもたちが自ら考える力をつけていくためにも特に大切な第一歩なのではないかと思っています。

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